コンプライアンスについて

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事務所の今月のTopicsでもお知らせしたように、平成16年度の賃金不払残業の是正結果の合計額は約226億円にも達しています。世に言う「サービス残業」に対する国の取締りのことですが、このサービス残業ほどコンプライアンスの観点から見て、軽視されているものはないでしょう。 

ご承知のようにわが国の労働基準法では、通常の場合、一日8時間、一週40時間を超えて労働者を働かせた場合、割増賃金を払わねばならないことになっているのですが、多くの企業、団体でこのことが完全に守られていないのが実情と思います。

残業するのは仕事の仕方が悪いから、残業など命令しているわけではない、残業代を全部払っていたら会社が持たない、など経営者側の言い分もあり、現在の労基法が100%妥当なものかどうかは別の議論に譲るとして、興味深いのは、このことに対するコンプライアンス意識の低さにあるといって良いでしょう。よそでもやっていることを何でうちだけ取り締まるの?そんなことどこでもやってるよ、という意識です。

コンプライアンス「法令遵守」が叫ばれてまだそんなに時間はたっていませんが、言葉そのものは定着してきたといってよいでしょう。企業の格付け、差別化がこのコンプライアンスにかかっているという議論さえもあるくらいです。
たとえば、この春施行された個人情報保護法などは、企業の関心も比較的高く、多くの企業が自社の個人情報管理の仕組みを真剣に見直しているのが事実でしょう。

これに引き換え、労働関係のコンプライアンス意識は一般的にいって大変低いというのが筆者の持論です。ともすると、法律を守らないほうが悪いのか、それとも(皆が)守れないような法律を作るほうが悪いのか、どうもよくわからなくなってしまいます。

交通のスピード制限時速などもそうですが、だれも厳格に守っていないものでも、それ(規制)が存在することによって、結果的に抑止力になっているから、それはそれでよいのでしょうか。

「残業」問題についてはいずれ本を書いてみようと思ってはいますが、今後コンプライアンス意識がたかまり、企業側も、法を作る側も双方が現実をもっと直視し、取り組まれることを期待いたします。経営者は、事業を顧客・労働者とも一体のものとしてその全体の幸福を願い、国は、守ってもらえるような制度、仕組みづくりにお互いに工夫をし、努力をしていくことが大切です。



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